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日経産業新聞 30ページ
 
■コミュニケーション活性化の努力、トップと現場距離縮む

仕事に情熱を燃やす社員をいかに増やすか――。こんな問題意識から現場の社員との距離を縮めようと努力する経営者が増えている。背景には、実力主義型の報酬制度導入や非正社員の増加などで、従業員の間で会社への帰属意識が薄れがちなことがある。現場とのコミュニケーション活性化のため意識的な努力を払っている企業の例を探った。

  「モチベーション・マネジメント」(PHP研究所)などの著書がある経営コンサルタントのリンクアンドモチベーション(東京・中央)の小笹芳央社長の話―企業は給与などの金銭的報酬と役職や肩書に代表される地位的報酬の二つを従業員に与え、従業員は企業に忠誠心や貢献活動を提供してきた。だが、バブル経済が崩壊した一九九〇年代以降は企業がこの二つの報酬を従業員に十分に与えることが難しくなり、従業員の士気が下がった。
  こうした時代の変化を背景に、社内コミュニケーションの重要性が増している。経営陣が従業員に日々の仕事が会社や社会にどのような影響を与えているのかを言葉で説明するのだ。さらに仕事を通じて成長できることを従業員に伝える。
  経営陣から従業員へのコミュニケーションは「広義の報酬」と私は名付けている。金銭や地位的報酬と異なり、無尽蔵なうえ、経営陣が手間と暇さえかければお金も社外に出ていかない。

  ここで大事なことはコミュニケーションの密度だ。経営陣が自らの言葉で繰り返し語りかける姿勢が従業員を奮い立たせるのだ。企業にとってコミュニケーションは体中を流れる血のようなもので、流れを滞らせてはならない。業務の分業化と専門化が進んだ現代では、従業員は自らの仕事の意義や目的を見失いがちだ。「わざわざ何度も言わなくても分かってくれているはず」と経営陣が思いこんでしまい、従業員とのコミュニケーションを怠ると企業全体の士気は確実に下がる。

  国際航空券を旅行会社に卸販売しているエフネス(東京・千代田、岡田直樹社長)は設立直後の一九九一年から年に一回の頻度で社員旅行を催している。同社は東京と大阪のほか、海外にも事業拠点を持つ。岡田社長は「年に一回は全社員が顔を合わせることで、異なる場所で働く社員同士でも円滑に意思疎通できる」と効用を説明する。
  直近の社員旅行は今年一月のグアム行き。期間は二泊三日だが、出発日をずらして二組に分かれ、合計で一週間となった。参加者は全社員の半分にあたる約五十人。一人あたり六万円前後になる旅費は会社がすべて負担した。
  現地ではソフトボール大会やバーベキューパーティーなどを企画、社員同士が親交を深めたほか、岡田社長をはじめとする経営陣が社員と懇談する場面もあった。
  離れた場所にいる社員に電話やメールなどで仕事を頼むとき、社員旅行で言葉を交わした相手であれば意思疎通がしやすく、仕事もはかどる。社員にとっては社長と直接話をしたことは仕事に取り組む動機づけになる。岡田社長は「内容は二の次。話をしたという事実が重要」と語る。社員の平均年齢は約三十歳。社員旅行を嫌がる社員は皆無に近いという。岡田社長は「アナログ風のやり取りを若い社員は求めている」とみる。

  同社の二〇〇五年十二月期の売上高は約二百三十七億円。決算期変更で九カ月決算になった〇四年十二月期に比べると、実質で三二%上回った。社員旅行との因果関係は立証困難だが、岡田社長は社員旅行の効果は絶大と確信している。

【図・写真】社員旅行でコミュニケーションを密にしている(1月グアム)