■外国人観光客増、どんな銘柄に恩恵――アジアとの“絆”で判断 ▽地方ホテルの収益に貢献 観光目的で日本を訪れる外国人が増えている。国際観光振興機構によると、二〇〇六年の外国人観光客数は約四百九十八万人となり、米国で同時テロがあった〇一年の約一・八倍に達した。 ただ、観光に関連するすべての企業に恩恵が及ぶわけではない。日本に観光客を多く送り込んでいるアジア各国・地域と強い関係を築いた企業に商機がありそうだ。 九月最初の月曜日となった三日の朝。札幌の定山渓温泉では、観光客がホテルをチェックアウトし、観光バスやタクシーで次の目的地に向かって行った。その中には台湾や韓国などアジアの人たちも多く含まれていた。 当地を代表するホテル「定山渓ビューホテル」を運営するカラカミ観光の遊佐弘隆社長は「外国人観光客はありがたい存在」と話す。北海道に六つある同社のホテルに宿泊した外国人は〇七年三月期で約二十万三千人と、〇一年三月期の約二・二倍に達した。 宿泊客全体に占める比率も〇一年三月期は約一〇%だったが、〇七年三月期には約一七%に伸びた。今期も今のところ前期を上回る勢いで推移している。 北海道経済の不振で「道内に住んでいる人は観光に行かなくなった」(牧野元彦・取締役経理部長)。このため、道内六ホテルの日本人宿泊客は減少している。 改修・修繕費もかさみ、同社の今期の連結経常利益は前期比九・九%減の八億円にとどまる見通しだ。 減益予想を映し、同社の株価もここ半年はさえない展開が続いている。ただ、外国人宿泊客が増えていなければ、さらに減益幅が拡大するのは必至。その意味では外国人宿泊客が株価を下支えしているといえそうだ。 日本人宿泊客の増加策にも取り組んでいるが、「外国人をどれだけ呼び込めるかが当社の成長力を左右する」(遊佐社長)。海外営業の担当役員を置き三カ月に一回は中国、韓国、台湾などの旅行会社を訪問させている。外国の旅行会社との窓口役となる社員も配置している。 藤田観光が運営する「新宿ワシントンホテル」(東京・新宿)では、九月一日に外国人専用カウンターを新設した。中国語と韓国語ができるスタッフを常駐させたほか、チェックインが円滑に済むようパスポート専用の読み取り機も設けた。 外国人観光客の増加による業績への影響は「現時点ではほとんどない」(経営企画グループ)ものの、将来の需要増を見越した動きだ。 「品ぞろえをもっと充実させれば業績にも貢献できるようになる」。トラベラーの浅原雅史・社長室長は意気込む。同社は日本人の海外旅行用土産品のカタログ販売が主力だが、外国人旅行者に日本の土産品を販売する事業にも注力。 〇五年に成田空港内に二店舗を開設、外国人向けに扇子や法被などを売っている。 外国人向け土産品の販売額は〇七年三月期で約六千万円と、開設初年度の〇六年三月期の約一・五倍に膨らんだ。今期の販売額は一億円を上回る勢いだ。今期見込みの売上高が百九十四億円の同社にとってまだ小さい存在だが、将来の収益源に育てていく考えだ。 中国をはじめとするアジア各国では所得水準も向上しており、訪日観光客はさらに増える可能性が高い。ただ、観光関連のすべての企業が潤うわけではない。国際航空券を旅行会社に卸販売しているエフネス(東京・千代田)の岡田直樹社長は「航空会社や旅行会社は縁が薄い」とみる。 アジアから観光目的で日本に向かう場合「日本の旅行会社や航空会社ではなく、現地の企業を利用するのが一般的」(岡田社長)だからだ。 都心の高級ホテルにとっても追い風にはなりにくい。外国人観光客の主力はアジア諸国・地域の人々。日本人でさえ「高い」と感じる最新の高級ホテル宿泊料は、アジアからの一般旅行者にとってはかなり重い負担で、客室稼働率アップに直結するとは考えづらい。 外国人観光客のかなりの部分をアジアの人が占める状況はしばらく続く公算が大きい。日ごろからアジアに的を絞った営業などを展開し、絆(きずな)を深めた企業がより大きな恩恵を受ける構図は当面は変わらないだろう。 ▽買い物目的 中国人増加へ 都心の家電量販店に追い風? 今後、訪日観光客数を押し上げていくのは、経済発展が著しく人口もけた違いに多い中国になりそうだ。観光産業に詳しい日本総合研究所の松村秀樹・主任研究員は「中国人は日本製の家電製品への関心が高く、買い物目的の観光客が増える」とみる。 このため「今後恩恵を受けるのは地方ホテルよりむしろ家電量販店」(松村主任研究員)かもしれない。 二〇〇六年の訪日外国人旅行者の国・地域別割合でみると、最多だったのは韓国で二八・九%。二位は台湾(一七・八%)で、中国は一一・一%の三位だった。 松村主任研究員は「所得水準向上の速度と人口規模を考えると、二五年には中国からの訪日者数が六百十七万人となり、〇六年の約七・六倍に達する」と予測する。 中国人観光客の多くは「日本文化や自然にはそれほど興味を持っていない」(松村主任研究員)。日本製の最先端の家電製品を手に入れようと考える人が多い。 東京などの大都市への関心も高いだけに、ビックカメラのように都心立地の家電量販店の業績に好影響を与える可能性がある。 カラカミ観光をはじめとする地方ホテルが中国人観光客を呼び込むには、東京とは違った魅力があることを伝える必要があるだろう。東京に飽きた中国人観光客の目を向けさせるための施策が求められる。